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アルミタンク法改正に至る背景
「調査委員会設置」と「調査結果」
★高圧ガス保安協会が調査検討のための「アルミタンク調査委員会」を設置
高圧ガス保安協会ではA6351容器を含めて、スクーバ用A6061容器のねじ部軸方向の割れ発生原因の調査、割れの進展から容器破裂の可能性の調査及び保安確保のための対策検討を行うことになり、高圧ガス保安協会内に「スキューバ用アルミニウム合金製容器調査委員会(調査委員会)」を設置し、第1回調査委員会が平成13年7月31日に開催された。
★海外においてもアルミ合金製スクーバタンクの破裂事故が発生していることが判明
高圧ガス保安協会のアルミタンク調査委員会において海外におけるスクーバ用アルミタンクに関する事故例を調査したところ、1994年6月から2000年3月までの間に8件の事故が発生しており、3名の重傷者を含む6名の負傷者が出ていることが分かった。
また、8件の破裂事故のうち、7件が充てん中に破裂しており1件が保管中に破裂した事例であった。
★高圧ガス保安協会アルミタンク調査委員会による調査結果
アルミタンク調査委員会では事故原因について以下のように結論を出した。
◎容器の割れや破裂に至ったメカニズム
- 容器のねじ部の結晶粒が粗大化し、結晶粒が容器の軸方向に並んだようになっていた。
- 容器内部に侵入した水分や塩分が侵入。
- 圧縮空気の酸素との相乗効果により、厳しい腐食環境となり、耐食性があるとされているA6351及びA6061にも腐食が発生。
- 腐食が容器ねじ部の粗大化した結晶粒界に沿って進み、容器ねじ部に応力腐食割れが発生。
- 空気の充てんと放出を繰り返すたびに割れが進行。
- 割れは初期にゆっくりとねじ部表面からトンネルを掘るように、容器外面と内面へ貫通せずに容器両面の皮1枚(リガメント)を残した状態で胴部方向に進展し、後期には充てん圧力による変動荷重の影響により、急速に進展し、破裂に至った。
◎なぜ容器のねじ部の結晶粒が粗大化したのか。
粗大化した結晶粒組織の問題は何か。
ねじ部の結晶粒の粗大化は、容器製造工程の底付管成形工程で90%を超える冷間加工ひずみが生じ、端部(頭部)成形工程の温間加工でその冷間加工ひずみが開放され、45%以下程度のひずみが残っている状態になり、その後の溶体化処理の加熱で結晶粒の粗大化が生じたものと考えられる。
なお、胴部については、底付管成形での冷間加工工程の90%を超える冷間ひずみが残存した状態で、溶体化熱処理が施されるため、端部(頭部)のような結晶粒の粗大化は起らず、結晶粒は微細でアルミニウム合金の正常な組織を維持している。
端部(頭部)の粗大化した結晶粒組織は、機械的性質の伸びの低下及び腐食に対する耐性の低下をもたらす。
容器のねじ部で軸方向の割れ状腐食が集中しているのは、このねじ部の粗大化した結晶粒界に沿って腐食が起き易いためであると考えられる。
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