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クリーンエアー・プログラム(CAP)|ダイビング用空気の汚染(ニオイ以外) 戻る 空気純度測定法と基準へ
前のページではダイビング用空気のニオイについて情報を紹介しました。このページではニオイ以外の問題物質についての情報を紹介させて頂きます。
ニオイ以外で問題となる物質の代表的なものとして、一酸化炭素、炭酸ガス、錆、水分、異物などがあります。これらはダイバーの健康に影響を与えたり、機器類にトラブルを起こす可能性があります。
ニオイが無いためこうした物質が混入しているかどうかを簡単に判断するのはなかなか困難です。
1.一酸化炭素
一酸化炭素は無臭・無味・無色で、それ自体に毒性があり、軽症の場合、頭痛・耳鳴・めまい・吐き気などがあります。一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結合するとピンク色の鮮紅色を呈するため、「良い」顔色をしているように見える事があります。
一般には炭火や練炭、自動車の排気ガスによる「一酸化炭素中毒」が知られています。
タンク内の空気に一酸化炭素が混入することはまれですが、コンプレッサーの空気吸い込み口からエンジンの排気ガスを吸い込んだり、また、コンプレッサーがオーバーヒートしたりした場合には一酸化炭素が発生する事があります。
エンジン駆動のコンプレッサーを使って空気を充てんする場合は、空気吸い込み口からエンジン排気ガスを吸い込まないように、風向きに十分注意する必要があります。
ほとんどの定置式充てん設備はモーター駆動のため、空気取り入れ口の設置場所が外部からの排気ガスなどを吸い込まないような場所にあれば、一酸化炭素の混入は少ないでしょう。
2.二酸化炭素(炭酸ガス)
二酸化炭素は環境中にごくありふれた物質で、その有毒性が問題となることはまずありません。しかし空気中の二酸化炭素濃度が高くなると、頭痛・めまい・吐き気などを催します。
換気の悪い室内では二酸化炭素の濃度が高くなることがあります。コンプレッサーがこうした場所の空気を吸い込んだ場合には、当然二酸化炭素濃度の高い空気がタンクに充てんされてしまします。そのため、充てん設備を設置している建屋は換気扇などを設置して十分な換気が必要です。
3.タンク内の錆
タンク内部が腐食していると、粉末状になった内部の錆が空気と共に出てくることがあります。粉末状の錆はレギュレータを通ってダイバーの肺の中に入って行きます。程度がひどい場合には「塵肺(じんぱい)」の原因になりますが、ダイビング活動だけが原因で塵肺になることはほとんど無いと思われます。しかし異物が肺に入るわけですから健康に良いはずがありません。
参考までに、塵肺の症状としては、咳、痰、息切れ、呼吸困難、動悸などがあります。
レギュレーターファーストステージのフィルターが茶褐色に変色しているような場合は、スチールタンク内部の鉄錆が空気と共に出てきている証拠です。アルミタンクの錆は白色粉末状なのでスチールタンクの場合より判断しにくいかもしれません。
その他、フィルターが黒や緑色に変色している場合は、フィルター自身が海水で腐食しているか、これまで使ってきた空気に粉末状の活性炭が混入していた疑いがあります。
左がきれいなフィルター、右は変色したフィルター
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4.圧縮空気中の水分
タンクに充てんされた圧縮空気中の水分は、機器類に与える影響とダイバーに与える影響の、2つの側面から見ることが必要です。
空気の充てんは、コンプレッサーで大気を取り入れて圧縮し、スクーバタンクに充てんします。コンプレッサーで空気を圧縮する過程で空気中の水分が除去され、タンクに充てんされる空気は乾燥した空気になります。
その乾燥度合いは、コンプレッサーと充てん設備フィルターの性能、そして設備の運転操作の仕方によって異なります。
4.1. 機器類に与える影響
圧縮空気はタンクからタンクバルブを通り、レギュレータでダイバーが呼吸する圧力まで減圧します。圧縮空気を急激に減圧するので空気の温度が下がります。(「断熱膨張」による断熱冷却)
激しく温度が下がると空気中の水分が氷の粒になり、レギュレータやタンクバルブの弁部に詰まって空気の流れを止めたり、弁を傷つけて空気が激しく吹き出すなどのトラブルを起こす可能性があります。
こうしたことを防ぐためには、圧縮空気中の水分は少ない方が良いのです。
4.2. ダイバーに与える影響
乾燥したタンクの空気をダイバーが呼吸していると、喉が渇き、ひどい場合は吐き気を感じることもあります。また、乾燥した空気を呼吸していると、血中の水分が肺を通して体外に排出され、血中水分量が低下します。血中の水分量が低下すると減圧症を発症する可能性が高くなりますので、良いことではありません。つまり、ダイバーにとっては圧縮空気中の水分量は多い方が良いのです。
ダイビングを始める前に水分を多く摂ることが推奨されているのはこのためです。
基準値の水分量 667.8 Vol ppm 以下 について
圧縮空気中の水分量は、機器類にとっては少ない方が良く、ダイバーにとっては多い方が良いという内容ですが、基準値は667.8 Vol ppm 以下と定めています。つまり水分量が基準値より多いことを不適切としています。
水分量が多すぎると、ダイビング中の突然の空気供給停止や、激しい空気の吹き出しを起こす可能性があり、そのような事態は直ちに重大な事故につながる事もあるために上限値を定めています。
下限値については、乾いた空気が直ちに重大事故につながる可能性は低いために、特に定めていません。
5.その他の異物 (粉末状の活性炭)
圧縮空気中に粉末状の活性炭が混じることがあります。これは充てん設備のフィルター部に使われている空気清浄用の活性炭が、何らかの原因で粉末状になり空気に混ざったものです。この影響は前述の「タンク内の錆」と同じですからその項目をご覧下さい。活性炭粉末以外の異物の混入もほぼ同じです。
空気に活性炭粉末が混じっている場合は、レギュレータファーストステージフィルターが黒くなります。
(錆によっても黒く変色することがあります)
6. どうするべきか?
ダイビング器材をセッティングする時に、レギュレーターファーストステージのフィルターをチェックして下さい。フィルターが変色しているようだと、フィルター自体が錆びているか、これまで使用してきた空気に異物が混入していた可能性があります。
こうした場合には、レギュレーターをオーバーホールに出して下さい。異物が混入していた空気を使用してきた可能性がある場合は、それが、いつ、どこで充てんした空気に原因があるのか見極めるのは困難です。(レンタルレギュレータの場合は、この限りではありません。)
次に、レギュレータから出てくる空気のニオイを嗅いで下さい。もしニオイを感じるようでしたら他の人にもチェックしてもらって下さい。複数の人が同じようにニオイを感じるようであれば、何らかの原因で空気が汚染されています。前ページの「ダイビング用空気の汚染 ニオイ」を参照して下さい。もしタンクから出る空気に異常が認められる場合には、タンクレンタルを受けた事業者にお知らせ下さい。
なお、当サイトの「ご意見・ご要望」ページからもご報告頂ければありがたく思います。
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